【C芽】ひとこと科学vol.27「枝垂れ桜の謎vol.3」

【C芽】ひとこと科学vol.27「枝垂れ桜の謎vol.3」

みなさん、こんにちは。

科学者の先生方などの「言葉」を届ける取り組み「ひとこと科学」からの第27弾の投稿です。

今回は松田先生から「枝垂れ桜の謎」のつづきです。

年間をとおして観察することで見えてくるものがあります。

これまでの「枝垂れ桜の謎」(6月29日・8月3日)も今回の投稿の最後に掲載しますので、ぜひ合わせてご覧くださいね。

★「ひとこと科学」第27回投稿★

〈タイトル〉

枝垂れ桜の謎vol.3

〈本文〉 

 桜の季節の終わりに図1を示して、どうして枝が地表に激突せずに向きを変えるのか謎を解こうとしましたね。

そのあと観測を続けると6月の終わりごろには(図2)新しい枝が伸びて葉っぱがぶら下がるので枝は重さに耐えかね先端はほとんど地表を這っています。

もし、このままの姿で枯れ葉が落ちれば枝先は地表を這ったまま来年の春を迎え、寝転び桜となるはずです。

 しかし、落葉が始まると地を這った枝は重さから解放されて軽くなり、地表から浮くようになりました(図3))。

新しい枝葉には弾力性があり浮き上がる意図が感じられます。

そこで桜さんにどうしてと聞いてみました。返ってきた答えは

「私たちが愛でてもらえるのは春だけなの。そのとき見苦しい姿は見せられないでしょ」

でした。  詩人はこれで納得し満足します。しかし豆科学者君は満足しません。

図1の謎のヒントは見えましたが、それでは来年さらに延びる枝はどこに向かって伸びるの??

さらに観測が続きます。

図 2
6月終わりごろの様子。
枝先は完全に地表(ここでは車庫の屋根)で行く手を阻まれて寝転んでいる。
おいこら 見苦しいぞ!

図 3
10月落葉して軽くなった枝は持ち上がり、葉がまだ地面に触っているところでも枝には弾力性が残っていて浮きあがりました。しかし来年は地表すれすれになった枝はどうなるの?
伸びないとすると、障害物があったとの情報はどこに、どのような形で記憶され、来春に枝の先端に伝えるのでしょうか?
また、伸びるとすると何を感じてどこに向かって伸びるのでしょう?
脳を持たない植物についてわたくしたちは経験で知っていても、生物・化学で解明すべき謎はいっぱいありそうです。Whyの原点は観測ですね。

*前回までの記事は以下からご覧いただけます。

6月29日「枝垂れ桜の謎」

8月3日「続編・枝垂れ桜の謎」

投稿者:松田慎三郎先生プロフィール】

1945年生まれ・京都大学出身・工学博士

原研核融合那珂研究所長、理事を経て2011年から東工大、京大、東北大特任教授、研究員、ITER国内チームリーダ、プラズマ核融合学会長を歴任

専門は核融合炉システム

【「ひとこと科学」について】

専門家の方など専門分野に携わる方の「言葉」を子どもたちや市民に届けていく取り組み。

科学者の先生方や科学技術の実務の現場の方、科学コミュニケーションの活動をされている方などの「言葉」を発信中。

【CAS×芽育】の新しい取り組み「ひとこと」

*参考:「市民と科学者のトークグループ CAS talk」について

https://blog.manabinomake.net/?p=528